
日本人はいつも曖昧ではっきりしないよね。
「曖昧で何考えてるか分からない…」と言われがちな日本人ですが、これは別にはっきりと物申す欧米人が正義で、グレーゾーンを好む日本人が劣っているという訳ではありません。
日本人=曖昧だという定評は「ハイコンテクスト文化 VS ローコンテクスト文化」の概念で実はかんたんに説明することが可能です。
欧米人と日本人の話がうまく噛み合わない事があるのは、そんな文化の違いのせいなのかもしれませんね。
日:「えーっと、でもそれはこうかもしれないです。」
米:「Ah? what are you talking about?」
とは言ってもハイコンテクスト文化って何のこっちゃ?って感じだと思いますので、本記事にて解説しながら日本の曖昧文化にも触れていきたいと思います。
ハイコンテクスト文化
多くを言わず語らずに暗黙の了解や省略されたメッセージを読み取って、コミュニケーションを図る文化のことを指します。
話し手も同じ文化圏で育った人なのだから細かいことをいちいち言わなくても、お互いを理解し合えるだろうという考えのもとに成り立っています。
聞き手が話し手の意図を正しく読み取る事が求められるという点で、聞き手の責任が大です。相手の意図を読み違えると「アイツは空気が読めない」というレッテルを貼られてしまうことも…
ローコンテクスト文化
伝えたいことは全て明確にして、口から発された言葉のみを頼りにコミュニケーションを図る文化のことを指します。
人々が思っていることを一言一句すべて明白に口にする為、どんなバックグラウンドの持ち主であっても円滑に会話をすることができます。
話し手が聞き手にきちんと意図を理解してもらう為に明確に話を展開する能力が求められるので、話し手の責任が大。
相手に勘違いされたら一貫の終わりなので、より簡潔な表現が重視されます。
ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化の違いを、よりわかりやすくまとめた図はこちら▽
参考元:High- and Low-Context Cultures
例
とても面白い文化の違いなので、実際の会話を例に挙げてみたいと思います。
同じシチュエーションにてどれだけ差が出るのか実際に考えながら読み進めてみてくださいね。
※もちろん個人差はありますが、一般論として話を展開していきます。
少し肌寒いので彼氏が着ているジャケットを貸して欲しいと思っている女性、さて彼氏になんて言うでしょう?
ハイコンテクスト▷「ちょっと肌寒いね〜」
ローコンテクスト▷「ちょっとここ肌寒いわ。ジャケットを貸してくれない?」
「ちょっと寒いね〜」とだけ言って彼氏がジャケットを貸してくれるだろうと思う場合、
彼氏がハイコンテクスト文化出身であれば「僕のジャケットを貸してあげるよ」となりそうですが、ローコンテクスト文化出身の場合「ね〜ちょっと寒いね。」で会話が完結する可能性が高いです(笑)
日本人からすると「うわ〜コイツ空気読めないな」と思うかもしれませんが、ローコンテクスト文化の人からすると、「寒いね」と言われればそれまでで「ああ、僕のジャケットが欲しいのか!」という発想までたどり着かないんです。

なんで寒いって言ったのにあなたのジャケット貸してくれないのよ!

Oh jesus, だったら「ジャケット貸して」って言ってよー!
ここで彼に怒ってしまうと、相手を混乱させてしまうので気をつけたいところです。
でも逆に言えば、「ハイコンテクスト文化VSローコンテクスト文化」という異なる文化を把握しておけば、喧嘩や混乱を事前に防ぐ事が出来るかもしれませんね。
ちなみに私の彼の出身国であるギリシャは、意外にも日本と同じでハイコンテクスト文化です。
それだからか、付き合いたての頃「寒いな〜」と言っていたらジャケットを差し出してくれた事がありました。ハイコンテクスト文化あっぱれ(笑)
なんでこの差が存在するの?
ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化の違いを理解したところで、なぜこのような違いが存在するのかについて考えてみましょう。
①多民族国家か単一民族国家か
ひとつの国にたくさんの民族が共存しているか否かが、ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化を分ける大きな要因です。
ひとつの国に住んでいる大多数が同じ民族(単一民族国家)である場合、みんなが同じ文化的なバックグラウンドを持ってるので敢えて全てを口に出さなくても分かり合う事が出来ます。
しかし、ひとつの国にたくさんの民族が共存している(多民族国家)場合、ひとりひとりのバックグラウンドや考え方が大きく異なる為、伝えたい事は全てはっきりと口に出さないと分かり合う事は極めて困難と言えます。
②美徳のズレ
人とコミュニケーションを取るにあたって、美徳とされている姿勢が国毎に大きく異なることも大きく関わっていると思います。
例えば、日本では意見をはっきりと言うと偉そうとか怖いとマイナスに捉えられる事がありますが、海外では自分の意見をしっかりと持ち発信する事が大切だと捉えられている国が多く存在します。

あ〜、あなたの意見もとても良いと思うのですが、私はこう思うかもしれないです。

I disagree with you. I don’t think we should do this!
③省略しやすい言語か
その国で主に話されている言語の仕組みも少なかりとは関係しているだろうなと私は思っています。
例えば、曖昧が好まれる日本で話されている日本語は主語を省略することの出来る言語です。
しかし反対に、明確が好まれるアメリカで話されている英語は主語を省略不可能な言語なんですね。
(私が)昨日公園で(彼女に)会ったよ。
I met her at the park yesterday.
このように日本語では主語を抜いても会話が成り立つ場合が多いですが、英語では主語を省略して「met at the park yesterday.」なんて言う事は出来ないですよね。
余談ですが、これに関しては日本語が曖昧だから日本人が曖昧を好むのか、それとも日本人が曖昧を好むから日本語は主語を省略できるのか、どちらが正しいのかと言われると正直難しいところです。
こんなどっちがどっちを引き起こしているのか分からないという状況を、英語では「The Chicken or Egg Problem」なんて言いますが、まさにそれです(笑)
※ニワトリは卵から生まれ、卵はニワトリから放出される。ん?じゃあどっちが先に?という問題を「The Chicken or Egg Problem」と言います。
ニワトリ=主語を省略できちゃう日本語
卵=曖昧を好む日本人
まとめ
「日本人は曖昧で何を言いたいのか分からない」という事実にばかり注目が集まりがちですが、実はその背景には日本はハイコンテクスト文化だからという理由が隠されていたんですね。
「あ〜ちょっとなんかここ肌寒いね。」とあなたが言った時のパートナーの反応にまで、ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化の違いが現れるのはとても面白いなと思います。
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